「健康経営に取り組んでいるけれど、人的資本情報開示にどうつなげればいいのかわからない」
そんな悩みを持つ企業も多いのではないでしょうか。
人的資本経営では、社員を「コスト」ではなく、企業価値を生み出す重要な資本として捉えます。そのため、健康経営で行っている施策も、単なる福利厚生や健康イベントとしてではなく、人材戦略の一部として整理することが重要になっています。
人的資本情報の開示が求められる中で、企業には「何をやっているか」だけでなく、「なぜ取り組み、その結果として何を目指しているのか」を説明することが求められています。
では、健康経営の取り組みを人的資本情報開示にどのようにつなげればよいのでしょうか。
この記事では、その考え方と具体的な整理方法を解説します。
健康経営と人的資本情報開示はなぜ関係するのか
近年、企業経営において「人的資本」という言葉を目にする機会が増えました。
人的資本とは、社員が持つ知識、スキル、経験、能力などを企業価値につながる「資本」として捉える考え方です。
金融庁の制度改正により、有価証券報告書では人材育成方針や社内環境整備方針、それらに関する指標・目標などの開示が求められてきました。さらに2026年には人的資本開示に関する制度見直しが行われ、企業戦略と関連付けた人材戦略など、新たな開示事項も加わっています。
また、2026年3月には内閣官房が「人的資本可視化指針」を改訂しています。
ここで重要なのは、人的資本開示が単に「社員に関する数字を公開すること」ではないということです。
企業にとって重要なのは、
経営戦略 → 必要な人材 → 人材への投資 → 取り組みの成果 → 企業価値
というつながりを説明できることです。
この中に、健康経営も位置づけることができます。
健康経営は「人的資本への投資」の一つとして考えられる
例えば、企業が「生産性の高い組織をつくる」という経営課題を持っていたとします。
そのためには、
- 社員が健康に働けること
- 心身の不調による休職・離職を防ぐこと
- 管理職が部下を適切に支援できること
- 社員同士が協力できること
- 長く働き続けられる環境を整えること
などが必要になります。
ここで健康経営が関係してきます。
健康診断の受診率を上げる、運動機会を提供する、メンタルヘルス対策を行う、食生活改善を支援する。
これらは一つひとつを見ると「健康施策」です。
しかし、経営戦略とのつながりを考えると、
社員の健康を支える → 安心して働ける → 活躍できる → 組織の力が高まる
という人材戦略の一部として捉えることができます。
つまり、健康経営は人的資本経営から切り離されたものではありません。
むしろ、社員が能力を発揮するための「土台」として位置づけることができます。
「実施した施策」だけを開示しても伝わりにくい
ここで、よくある問題があります。
例えば、
「健康診断受診率98%」
「ストレスチェック受検率95%」
「健康セミナーを年間10回開催」
という数字を並べたとします。
もちろん、これらは重要な情報です。
しかし、これだけでは、
「その取り組みが経営にどうつながっているのか」
までは伝わりません。
人的資本開示で大切なのは、数字そのものだけではなく、その数字が何を意味するのかです。
例えば、
「長時間労働による健康リスクが課題だった」
↓
「管理職へのマネジメント研修と社員へのセルフケア教育を実施」
↓
「管理職の声かけや相談対応を強化」
↓
「メンタル不調による休職リスクを低減」
というように、課題・施策・成果のつながりを示す。
このストーリーがあることで、健康経営が「イベントの実績」から「経営上の取り組み」へ変わります。

健康経営を人的資本情報として整理する4つの視点
健康経営の取り組みを人的資本の観点から整理するときは、次の4段階で考えると分かりやすくなります。
① 何が課題なのか
まずは自社の人材・健康面の課題を明確にします。
例えば、
- 若手社員の離職
- 管理職の負担増加
- メンタル不調
- 健康診断結果の悪化
- 運動不足
- 高齢社員の増加
- 部署間コミュニケーションの不足
などです。
「健康経営をするから健康施策を考える」のではなく、経営や人材の課題から健康施策を考えることがポイントです。
② 何をするのか
次に、その課題に対してどのような取り組みを行うのかを決めます。
例えば、
「管理職のメンタルヘルス対応力を高める」
という課題なら、管理職研修、1on1の改善、相談体制の整備などが考えられます。
「社員の運動不足」が課題なら、運動イベントや職場でできる運動機会の提供などが考えられます。
③ 何が変わったのか
ここでは、取り組みの結果を確認します。
例えば、
- 参加率
- 健康診断結果
- ストレスチェック結果
- 有給休暇取得率
- 休職・離職状況
- エンゲージメント
- プレゼンティーズム
- アブセンティーズム
などです。
すべての指標を追いかける必要はありません。
自社の課題と関係する指標を選ぶことが重要です。
④ 経営にどうつながったのか
最後に、
「だから会社にどんな変化があったのか」
を考えます。
例えば、
健康施策
↓
社員の健康状態改善
↓
欠勤・休職リスクの低減
↓
人材の定着
↓
採用・教育コストの抑制
という流れです。
ここまでつながると、健康経営が「福利厚生」ではなく、経営戦略の一部として説明しやすくなります。
「健康経営をやっています」から「なぜやっているか」へ
人的資本情報開示を考えるうえで、企業が意識したいのは、
「何をしていますか?」ではなく「なぜ、それをしていますか?」
という視点です。
例えば、
「ウォーキングイベントを開催しています」
だけではなく、
「社員の運動不足と部署間の交流不足を課題として認識し、健康づくりとコミュニケーション活性化を目的にウォーキングイベントを実施しています」
と説明する。
さらに、
「参加率や社員アンケートを確認しながら、次年度の施策を改善しています」
と続けば、PDCAまで見えてきます。
これだけでも、取り組みの意味が大きく変わります。

中小企業でも人的資本の考え方は活用できる
「人的資本情報開示」と聞くと、上場企業や大企業だけの話に感じるかもしれません。
しかし、考え方そのものは中小企業でも活用できます。
むしろ中小企業では、
「社員が辞めると事業への影響が大きい」
「一人の体調不良で現場が回らなくなる」
「採用が難しい」
「管理職に負担が集中している」
といった課題が、経営に直結しやすいでしょう。
だからこそ、
人材をどう確保し、どう育て、どう健康に働き続けてもらうか
を考えることは非常に重要です。
人的資本の「開示」が必要ない企業であっても、人的資本経営の考え方を取り入れることで、健康経営の目的を明確にすることができます。
健康経営を「数字集め」で終わらせない
人的資本情報開示を意識すると、
「どんな数字を取ればいいのか」
という方向に意識が向きがちです。
もちろん指標は重要です。
しかし、数字を増やすことが目的になってしまうと、本来の健康経営から離れてしまいます。
大切なのは、
課題を把握する → 施策を行う → 社員の行動が変わる → 組織が変わる → 経営につながる
という流れです。
その中で必要な数字を測る。
この順番で考えることが重要です。
健康経営の窓口では、運動・食事・メンタルヘルス・健康相談・ワークショップなど、企業の課題に合わせた健康づくりを支援しています。
特に重要にしているのは、施策を「実施した」というところで終わらせず、社員が実際に参加し、行動につなげられる仕組みをつくることです。
制度やアプリを導入するだけでは、現場が動くとは限りません。
国家資格者などの専門職が現場に入り、社員の反応を見ながら施策を調整する。
そして、参加率や社員の声などを確認しながら、次の施策につなげていく。
こうした現場での積み重ねが、最終的には人的資本のストーリーをつくる材料にもなります。
まとめ|健康経営を「企業価値につながる取り組み」として考える
人的資本情報開示で求められているのは、単純な数字の羅列ではありません。
重要なのは、
経営戦略と人材戦略がどうつながっているのか。
そして、
人材への投資が、どのように企業価値につながるのか。
を分かりやすく伝えることです。
健康経営も、
「健康診断を受けてもらう」
「運動イベントを開催する」
「研修を実施する」
だけで終わらせるのではなく、
「なぜ必要なのか」
「社員にどんな変化を期待するのか」
「組織や経営にどうつながるのか」
まで考えることで、人的資本経営の一部として位置づけやすくなります。
人的資本情報開示を「開示のための作業」と考えるのではなく、自社が人をどのように大切にし、どう活躍してもらいたいのかを整理する機会として捉える。
それは、健康経営そのものを見直すきっかけにもなるでしょう。
人的資本経営や健康経営を、単なる制度や施策の実施で終わらせず、人材戦略・組織づくり・企業価値につなげたい企業へ。
健康課題の把握から施策の設計、社員が参加しやすい仕組みづくり、現場での運用まで、企業の状況に合わせて伴走します。
「取り組んでいるけれど成果が見えない」
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という企業の方は、ぜひご相談ください。


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