株式会社アスペア

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目次

ブライト500でも、健康経営は完成しない。

社員の将来像を見据えながら育て続ける、株式会社アスペアの現在地

健康経営優良法人として継続的に認定を受け、ブライト500にも選定されている株式会社アスペア。

同社は、東京都町田市に本社を置き、Webサービスのコンサルティングからシステム構築、運用・保守、業務支援までを手がけるIT企業です。1991年の設立以来、顧客のサービスや事業の価値を高めるため、システムの企画から開発、運用までを一貫して支援してきました。

アスペアでは、健康経営という言葉が広く知られる以前から、フレックスタイム制や育児休業、時短勤務などを取り入れ、エンジニアが長く働き続けられる環境づくりを進めてきました。

その背景には、加藤代表自身が、エンジニアとしてブラックな環境で働いてきた経験があります。

長時間労働が当たり前とされやすい業界の中で、社員が健康を損なえば、技術者としての成長も、会社としての持続的な発展も難しくなります。
加藤代表が目指してきたのは、単に社員数を増やすことではありません。

困ったときに相談されるような、高い技術力を持つエンジニア集団を育てること。そのためには、一人ひとりが心身ともに健康で、長く働き続けられる環境が必要だと考えてきました。

健康診断の受診促進、勤務間インターバル制度、メンタルヘルス研修、運動支援、社員同士で感謝を伝え合う仕組みなど、これまでに実施してきた取り組みは多岐にわたります。

しかし、今回の取材で見えてきたのは、制度や施策が整った「完成された健康経営」の姿ではありませんでした。
外部から高い評価を受けている企業であっても、社員一人ひとりに取り組みを届け、参加や行動につなげることは簡単ではありません。

社員の反応を確認しながら、小さく試す。思うような結果が出なければ、伝え方や進め方を変える。
アスペアの健康経営は、ブライト500に選定された現在も、代表と健康づくり担当者を中心に試行錯誤を続けています。


制度をつくることから、社員に届く形へ

アスペアでは、2018年の健康企業宣言をきっかけに、健康経営の取り組みを体系的に進めるようになりました。

健康診断の受診率向上、勤務間インターバル制度、残業時間の削減、予防接種費用の負担、メンタルヘルス研修など、認定基準も確認しながら、一つずつ社内の環境を整えてきました。

最初から大規模な制度を導入したのではありません。

会社としてできていることと、まだできていないことを整理し、取り組めるものから少しずつ始める。その積み重ねが、現在のブライト500選定につながっています。

※ブライト500:健康経営優良法人に認定された企業の中で、特に優れた取り組みを行っている全国上位500法人に与えられる称号・冠。

一方で、制度が増え、認定を重ねるにつれて、新しい課題も見えてきました。

会社が良いと思って用意した施策であっても、社員が必要性を感じなければ利用されません。社内へ案内を出しただけでは、情報を見てもらえないこともあります。

制度を整える段階から、社員にどのように届け、参加につなげるかを考える段階へ。

アスペアが現在向き合っているのは、健康経営を会社の制度として整えること以上に、社員一人ひとりの行動や意識へどうつなげるかという課題です。

毎週の対話で、現場の反応を経営へ戻す

代表取締役社長 加藤 雄一

現在、健康経営の推進実務を担当しているのは、バックオフィス業務全般に携わるSさんです。
Sさんは、子育てをしながら時短勤務で働き、健康経営の施策や社内制度の整備にも携わっています。

アスペアでは、加藤代表とSさんが週に1回、約60分のミーティングを行っています。
認定に必要な項目を確認するだけではありません。

現在進めている取り組み、社員から寄せられた意見、社内の反応、これから検討すべき課題について、経営者と実務担当者が継続的に話し合っています。

健康経営では、担当者を決めたことで、経営者が実務から離れてしまうケースもあります。
担当者が情報収集から企画、社内案内、結果の確認までを一人で抱えれば、やがて健康経営は「担当者だけが頑張る活動」になってしまいます。

アスペアでは、実務をSさんへ任せきりにするのではなく、毎週の対話を通じて、現場で起きていることを経営判断へ戻しています。

一方で、加藤代表だけで施策を決めるのでもありません。
社員に近い立場で実務を担うSさんの感覚や、社員から上がってきた声を受け取りながら、次の取り組みを一緒に考えています。

健康経営をトップダウンだけでも、担当者任せでも進めない。
この関係性が、アスペアの取り組みを継続させる土台になっています。


良い企画を用意するだけでは、社員は動かない

健康経営では、社員のためを思って企画したものが、必ずしも期待どおりに受け入れられるとは限りません。
アスペアでは、日常生活の中で身体を動かすきっかけをつくるため、「階段利用強化週間」を実施しました。

特別な道具や大きな費用を必要とせず、エレベーターではなく階段を選ぶ。日々の小さな行動を健康づくりにつなげようという企画です。
しかし、社内へ最初に呼びかけた段階では、目立った反応がありませんでした。

健康に良い情報を届ければ、社員が関心を持ち、行動してくれる。
健康経営を進める側は、ついそのように考えてしまいます。しかし、健康への関心や生活環境は人によって異なります。

必要性を感じていても、仕事や家庭の都合で取り組む余裕がない人もいます。情報を目にしても、自分が参加する企画だとは感じない人もいるでしょう。

アスペアでは、エンジニアの8割以上がリモートで勤務し、社員は宮城県から沖縄県まで全国各地に在籍しています。
同じオフィスで働いていれば、誰かが階段を使う姿を見たり、社員同士で声を掛け合ったりできます。一方、離れた場所で働く環境では、Slackで案内を送るだけでは、企画の雰囲気や参加するきっかけまで共有することはできません。

ところが、その後、社内で影響力のある社員が実際に取り組んだ様子を投稿すると、ほかの社員からも少しずつ反応が生まれました。
会社からの案内だけでは動かなかったものが、身近な社員の行動を通じて伝わったことで、「自分もやってみよう」という空気に変わっていったのです。

この経験から見えてくるのは、良い企画を用意することと、社員が参加したくなることは別だということです。
何を行うかだけでなく、誰が伝えるのか。どのように見せるのか。参加した人の行動をどう共有するのか。

社員に届く健康経営には、施策の内容だけでなく、社内で自然に広がるための導線が必要です。


社員の声から生まれる制度と、会社からの提案

ボクシング 元世界チャンピオン 畑山隆則さん によるメンタルヘルスセミナー

会社から働きかけても、すぐには反応が得られないことがある一方で、社員から上がった声が制度につながった例もあります。
定例会で社員から出た「ジムの利用料を補助してほしい」という提案は、社内で検討され、実際の制度として形になりました。

会社が一方的に健康施策を用意するのではなく、社員が必要としているものを提案し、会社がその声を受け止める。
これは、健康経営が社員にとって身近なものになり始めていることを示す出来事です。

ただし、すべての取り組みが同じように広がるわけではありません。
社員から自然に声が上がることもあれば、会社から呼びかけても関心を得られないこともあります。
この両方があることが、健康経営の現実なのだと思います。

うまくいった施策だけを並べれば、健康経営は一直線に進んできたように見えます。
しかし実際には、社員の声を制度にできた経験と、企画を行っても当初は反応が得られなかった経験を行き来しながら、少しずつ会社に合う方法を探しています。

施策の数を増やすことよりも、社員の声や反応を次の判断材料にする。
アスペアの実践からは、その姿勢が伝わってきました。


働き続けられる会社を、今の社員に合わせて考える

現在、アスペアでは、育児や介護と仕事を両立するための休暇規定づくりも進めています。

創業以来、社員が長く働ける環境づくりを大切にしてきましたが、働く人が抱える事情や、社会から会社へ求められる支援は時代と共に変化しています。

育児や介護に関する制度も、規定があるだけでは十分ではありません。

必要なときに実際に利用できるか。上司や周囲へ相談しやすいか。制度を使うことで、その後の仕事を続けにくくならないか。制度を利用する社員の立場から考える必要があります。

実務を担当するSさん自身も、子育てをしながら時短勤務で働く一人です。

加藤代表は、経営者として制度を考えるだけでなく、実際に制度を利用する立場に近いSさんの経験や意見を聞きながら、会社として必要な仕組みを検討しています。

健康経営というと、運動、食事、健康診断など、身体面の施策が注目されがちです。
しかし、育児や介護を理由に、働き続けることへ不安を感じる状態も、働く人の心身の健康と深く関係しています。

社員がそれぞれ異なる事情を抱えながらも、無理をせず働き続けられる環境をつくる。
加藤代表が創業以来大切にしてきた考え方は、現在の社員や社会の変化に合わせて、少しずつ形を変えています。


ブライト500は、完成の証明ではない

代表も東京マラソンに参加

ブライト500に選定されていると聞けば、その会社の健康経営はすでに完成しているように見えるかもしれません。
しかし、社員や働き方が変われば、必要とされる支援も変わります。

以前は効果があった伝え方が、現在の社員には届かないこともあります。新しい制度を導入しても、利用されなければ改善が必要です。
認定は、これまでの取り組みに対する一つの評価です。

同時に、現在の課題を見直し、次の実践へ進むための通過点でもあります。
アスペアでは、すでに多くの施策や制度が整っています。それでも、社員の反応を見ながら、伝え方や制度の内容を考え続けています。

うまくいった取り組みだけでなく、思うように届かなかった経験にも目を向ける。
そして、そこで終わらせず、なぜ届かなかったのかを考え、次の方法を試してみる。

今回の取材から伝わってきたのは、健康経営に完成形はないということでした。
ブライト500に選定された企業であっても、すべての社員が積極的に参加し、すべての施策が期待どおりに進むわけではありません。

だからこそ、これから健康経営を始める企業も、最初から完璧な制度や大きな成果を求める必要はないのだと思います。

社員の声を聞き、反応を確かめ、小さな改善を積み重ねる。
アスペアの現在地は、健康経営とは立派な制度を完成させることではなく、働く人に合った形へ育て続けることなのだと教えてくれます。


取材を終えて

今回、特に印象に残ったのは、アスペアがブライト500の選定を「健康経営が完成した証」として捉えていないことでした。

長年取り組みを続け、多くの制度を整えてきた企業であっても、社員への伝え方や参加のきっかけづくりには悩みます。

階段利用強化週間では、会社から案内しただけでは目立った反応がなく、社員の投稿をきっかけに少しずつ参加が広がりました。
この小さな出来事に、健康経営の本質が表れているように感じます。

制度を導入したかどうかではなく、社員がどのように受け止めたかを見る。反応がなければ、社員の意識が低いと片づけるのではなく、伝え方や仕組みを見直す。

健康経営は、会社が社員に何かを与えるだけの活動ではありません。
経営者、担当者、社員が、それぞれの立場から声を出し合いながら、自社に合う形を一緒につくっていくものです。

アスペアの実践は、認定取得後にこそ始まる健康経営の難しさと、その先にある可能性を伝えてくれました。

株式会社アスペア

株式会社アスペアは、1991年設立のIT企業です。東京都町田市に本社を置き、Webサービス向けのコンサルティング、システム構築、運用・保守、業務支援などを行っています。

顧客の事業やサービスの目的を共有し、要件定義から開発、運用までを一貫して支援。納品して終わるのではなく、ビジネス環境の変化に応じてシステムの価値を継続的に高めることを大切にしています。

健康経営においては、社員一人ひとりが心身ともに健康で、生き生きと仕事に取り組み、挑戦を続けられる環境づくりを推進しています。

会社名
株式会社アスペア

所在地
東京都町田市原町田1-2-3 アーベイン平本ビル2F

代表者
代表取締役社長 加藤 雄一

設立
1991年3月1日

事業内容
Webサービス向けコンサルティング、システム構築、運用・保守および業務支援

公式サイト
https://www.aspire.co.jp/


取材日:2026年7月
取材者:服部好江、岩浅秀郎

私たちは、健康経営に取り組む企業の実践を取材し、その背景にある想いや試行錯誤を発信しています。

完成された成功事例だけでなく、取り組みの途中で生まれた課題や工夫を伝えることで、これから健康経営を進める企業のヒントにつなげていきます。

【インタビューのご依頼はこちら】
info@kenko-mado.com

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この記事を書いた人

一般社団法人健康経営の窓口 代表理事
ファイナンシャルプランナー

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