経営層が押さえておくべき健康経営の基本指標

―人事・健康経営担当者が“見える化”すべきデータとは―

企業の持続的な成長には、「人材の健康」が欠かせません。
しかし、健康経営を推進する中で「具体的に何を測ればいいのか分からない」「経営層に数字で説明できない」といった悩みを抱える人事・健康経営担当者は多いのではないでしょうか。

本記事では、健康経営を進める上で経営層が押さえておくべき“基本指標”と、その活用ポイントを整理します。


1. 健康経営の「見える化」が必要な理由

健康経営は「理念」だけでなく、「データに基づく経営判断」が求められる時代に入っています。
経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」でも、数値による現状把握と効果測定が重視されています。

たとえば、

  • 健康施策の投資対効果(ROI)を可視化できる

  • 経営層への報告や意思決定がスムーズになる

  • 従業員の健康リスクを早期に把握できる

といったメリットがあり、「データを示せる人事部門」は経営にとって欠かせない存在となっています。


2. 経営層が押さえておくべき5つの基本指標

(1)定期健診受診率

すべての健康施策の出発点です。
受診率が100%でない企業は、まず「受診勧奨体制の整備」や「再検査フォロー」などを優先的に整える必要があります。
特に中小企業では、受診後のフォロー(再検査や特定保健指導の実施率)が課題になりやすいため、単なる“受けさせっぱなし”にならない仕組みづくりが重要です。

(2)ストレスチェック受検率・高ストレス者比率

メンタル不調による生産性低下や離職は、企業の大きな損失につながります。
ストレスチェックの実施率が90%以上あるか、結果をどう活用しているかを確認しましょう。
重要なのは「高ストレス者の割合」そのものよりも、職場環境改善の取り組みにつなげているかどうかです。

(3)アブセンティーズム・プレゼンティーズム

近年注目されているのが、健康による生産性損失(Presenteeism・Absenteeism) の指標です。

  • アブセンティーズム:病欠・早退・遅刻など、出勤できない時間の損失

  • プレゼンティーズム:体調不良などで出勤していてもパフォーマンスが下がる状態

これらは“見えない損失”とも言われ、健康経営の投資対効果を語るうえで欠かせません。
アンケートや外部ツールを活用して定期的に測定することをおすすめします。

(4)生活習慣・健康リスク関連指標

BMI、血圧、血糖値、喫煙率、運動習慣、睡眠時間などのデータは、将来的な疾病リスクの予測に役立ちます。
特にメタボ該当率や喫煙率は、厚労省・経産省の認定項目でも重視されています。
全社平均だけでなく、部署別や年代別に集計すると課題が明確になります。

(5)離職率・労働生産性指標

健康経営は「健康のための活動」ではなく、「経営成果の向上」を目的とする取り組みです。
そのため、離職率や労働生産性(売上高/人件費)などの経営指標と健康データをセットで見ることが重要です。
健康施策によって離職が減った、業務効率が上がったなどの“経営効果”を示せれば、経営層の理解と支援を得やすくなります。


3. 指標を活用した「健康経営PDCA」のすすめ

データを集めても、活用できなければ意味がありません。
ポイントは、PDCA(Plan-Do-Check-Act) を回しながら継続的に改善していくことです。

フェーズ具体的な内容Plan現状分析・課題設定(例:健診受診率90%未満→100%を目標に)Do対策実施(例:産業医・保健師によるフォロー体制構築)Check指標の変化を確認(例:受診率・再検査率の上昇)Act改善策を次年度に反映(例:対象者への個別面談導入)

こうしたサイクルを明確にすることで、「なんとなく取り組んでいる健康経営」から「成果を示せる健康経営」へと進化します。


4. データ分析を支える外部リソースの活用

人事担当者がすべての指標を自力で集計・分析するのは現実的ではありません。
最近では、健康経営支援ツールや、産業保健・運動指導などの専門家ネットワークを活用する企業が増えています。

外部の専門家を活用することで、

  • 各指標の分析・報告書作成の負担軽減

  • 専門的な視点による改善提案

  • 経営層への報告資料づくりの効率化

といった効果が期待できます。


5. まとめ

健康経営は「感覚的な取り組み」から「データドリブンな経営課題」へと進化しています。
人事・健康経営担当者が指標を整理し、経営層にわかりやすく伝えることが、組織全体の理解と協力を生み出します。

まずは、

  1. 健診受診率

  2. ストレスチェック結果

  3. プレゼンティーズム

  4. 健康リスク指標

  5. 離職率・生産性

この5つを押さえ、継続的な改善につなげていきましょう。

健康経営は、数字の先にある「人の健康」と「企業の未来」を育てる経営戦略です。

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